「海道をゆく」を通じて、今日の日本人から喪われつつある祖国愛を描いたつもりである。一年間にわたってあるいてきた日本屈指の長さを誇る美しき呉の海岸線「海道」は、実はわれわれの祖国、海洋国家日本そのものであることをご理解いただきたい。
また、折にふれ、日本民族が古来より神道を基本に培ってきた武士道に象徴される美しい精神性を見つめ直してきた。連日報道される慈悲なき凶悪犯罪、公共心なき公務員や商道徳なき企業経営者による不祥事や事件は一体、私たちになにを訴えかけるものなのか。戦後教育により押しつけられてきた歪んだ歴史認識、自虐史観を背景に正当化され続けてきた米国型の個人主義や 民主主義、資本主義さえもが、数千年もの長きにわたり培われてきた日本民族の精神性や体質に合わなかったことを示唆するものではないだろうか。
私たちは今こそ、祖国の歴史を知り、郷土の歴史を見つめ直さなければならない。そして、これらの歴史を学ぶことを通じて、われわれの先人が無数の艱難を乗り越えて今に伝える祖国や郷土そのものを大切に思う気持ちを個々の意識により養っていかなければならない。そのうえで、世のなかに溢れる希薄な情報、不正確な情報に左右されることなく、時代を的確に読み抜き、この国やこのまちの伝統や文化、精神性を活かしたよりよい未来を築いていくべきではないか。
「海道をゆく」を読まれた方々には、是非とも次の世代を担う子供にわかりやすい言葉で祖国や郷土に宿る歴史を語り聞かせてあげてほしい。そして、時にはこれら諸海道を一緒にあるきながら、郷土や祖国の美しさを語ってあげていただきたい。そのような小さな積み重ねが、郷土に誇りをもち、祖国に誇りをもった真の人材を育み、近い将来、呉の力や日本の力を高めていくこと、ひいては世界規模での明るい豊かな社会の実現につながるにちがいない。
「海道をゆく」を通じて出会うことができた全ての「まち」と「ひと」、積極的に取材に協力していただいた皆さまや励ましの言葉をいただいた皆さまに心より感謝申し上げます。