8
中央桟橋界隈

中央桟橋界隈の大和ミュージアムとてつのくじら館について

三条から三津田橋を渡り、二河川河川敷の歩道を下流にむかってあるいてゆくとやがて潮の香りにつつまれてくる。そして、河口までたどり着くとそこには二河川公園という公園が、呉湾に臨んでひっそりとたたずんでいる。心地よい潮風に身をゆだねつつ、防波堤の先端から広がる海を眺めると、呉 湾を塞ぐかのように横たわっている江田島の頭上で輝く陽の光が雲のすき間から海面に差し込み、海が金色に輝いて見える。

二河川公園から呉の海の玄関口である中央桟橋にむかってあるいてゆくと、大和ミュージアムの名で親しまれている呉市海事歴史科学館、そして間もなく開館されよ うとしており、てつのくじら館の愛称で親しまれるであろう海上自衛隊呉史料館があり、呉の新たな観光名所としての脚光を集めてい る。

大和ミュージアムは、平成十七年四月に開館。映画「男たちの大和」の撮影も行われた。一階には、大和ミュージアムの目玉といえる十分の一サイズの戦艦大和がある。大和は、呉海軍工廠において極秘裏に建造され、昭和十六年 (1941年)に完成した世界最大、最新鋭の戦艦であり、昭和二十年の沖縄特攻作戦にむかう途上、米艦載機の攻撃を受けて沈没。乗員3332名のうち3056名が大和と運命を共にした。同じフロアーには、零戦や映画「出口のない海」でも採り上げられた人間魚雷回天の実物などが展示される大型資料展示室や呉の歴史展示室がある。呉の歴史展示室では、幕末の黒船 来航に始まる時代背景、そして海軍工廠が開庁してからの重厚な呉の歴史が時系列的に理解できるようになっている。また、三階には、海と船に関わる科学の原理を体験、 体感できる船をつくる技術展示室 などがある。

大和ミュージアムに隣接して、てつのくじら館が建設されている。平成十八年(2006年)九月に陸揚げされた全長七十六メートル、高さ十六・三メートル、重さ二千トンという巨大な潜水艦「あきしお」が屋外に展示されている。なによりもまず、このジャンボジェット機の胴体部分とほぼ同じとされる「あきしお」の大きさに度肝を抜かれる。平成十九年四月に開館する とのことであるが、宙にうかぶこの巨大な潜水艦「あきしお」の内部も見学できるという。さらには海上自衛隊の歴史、潜水艦や掃海艇の活躍がよくわかる展示室なども設置されるそうで、まことに興味深い。大和ミュージアムとてつのくじら館という呉ならではの施設を核に、さらなる観光客が全国 から集まることが期待されている。

大和ミュージアムの南面はガラス張りとなっており、その外は、海にむかって実物大の戦艦大和の甲板をかたちづくった公園が広がっている。この公園からは鴎が飛び交う美しい呉港を真正面から眺望できる。また、公園に隣接する中央桟橋からは、時おり、江田島や四国などとを往来する白色のフェリーがゆっくりと出航し、旅情をかきたてるのである。